~落書き帳「○△□」~
安野光雅さんの絵本に、『天動説の話』という題の不思議な作品があります。地球という「球」の表面に住んでいながら、その捉え方は生活圏を出ない視野の狭いものであることを、時代と変遷とともに見事に表現した絵本だったと記憶しています。
まあるいボールを手に取ってみても、観察するだけでは球面を理解することはできません。
たとえば、球の直径と同じ幅の紙を球の周りに赤道の長さ分だけピッタリ巻き付けてみましょう。このとき、球面と紙とが接するのは大円の周だけです。紙の他の部分を無理やり球面に貼りつけようとすると、シワシワになるし、極付近には届きませんね。
ところが、球の表面と紙面では、面積が等しい!のです。
(その昔、ある酒席でS.N教授に突然このことを聞かれたのですが、頭の固い翁の耳に入ったその問いは、緊張のあまり脳まで届きませんでした……)
実は、それだけではありませんでした。
図のように球を(直径 2rを垂直に4等分するように)輪切りにすると、球の表面積も4等分されて πr² ずつになるのです!
(After twenty yeas,……)
失われた算額に、面白い問題を見つけました。
【問題】(嘉永三年、三春町御幡町六地蔵堂)
今有如図球内穿去三角
只云球径一寸
問穿去覓積幾何
答曰穿去覓積三分九二六有奇
(伊達 川又 佐藤作十正方)
球だけでも厄介なのに、それを正三角柱で穿つとは。アリスが兎の穴を落ちてゆくときに味わったような気分になりますね。
穿去してできる穴を正面から見れば、円に内接する正三角形(と解釈)ですが、求める部分は球面の一部(曲面)なので難題です。
でも、ご安心を。上記の事実を知っていれば、穿去覓積(球面から穿去される表面積)は
4πr²ー3・πr²=πr²
片側だけなら、πr²/2となり、
r=0.5(寸)として π/8=0.3926…… が導かれ、一件落着。
以上、「216」「217」に続く高校三年生へのメッセージでした。お試しあれ。