~落書き帳「○△□」~
三春町龍穏院算額から、最後の問題を取り上げます。柾目の通った板に描かれた美しい図が人目を引きます。
【問題】
今有如図大円相交容小円画菱設黒積
大円径若干黒積最多
問得菱長術如何
(磐城國田村郡片曽根村 助川音松 撰)
注意を要する点は、はじめに大円(2つの等円)が与えられていること。したがって、大円の直径は定数です。
菱長とは、長い方の対角線の長さのこと。すなわち、2つの大円の重なり具合を示します。
大円(等円)の直径を R とすると、R は定数であり、菱長が
R<(菱長)<2R
の範囲で変化します。ただし、実際の変数は、大円の中心から黒積を見込む角にとるのが自然でしょう。
また、小円は「飾り」ではなく、「なくてはならない存在」です。黒積が2つの大円の交わりだけならば、(菱長):2R→R に従って単調増加するだけですから。
【術曰】置円積率自之以除一分二厘五毛加五分以除大円径得菱長合問
円積率とは、円周率を4で割った π/4 のことで、術文は
(菱長)=(大円径)/{0.125/(円積率)²+0.5}
という式を表しています。なお、黒積最大のとき、菱形の左右の角 θ は「tan(θ/2)=2/π」を満たす角(約65°)です。
三角関数の微分法を用いて解ける、高校三年生向けの問題。解答をお寄せください。